K A M O M A I L

ネコに煮干しをあげてください。

たちどまる小さな魂たち

日が翳りはじめの目黒。はじめての東京都庭園美術館。
『クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス - さざめく亡霊たち』展

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クリスチャン・ボルタンスキー・・・といえば、瀬戸内・豊島の「心臓音のアーカイブ」が印象的。音って波だと思うほど、力強く脈打つ心臓音を体感すると、ひどくおろおろした気分になったのを思い出す。

 

さて、アール・デコ様式の装飾うるわしい旧朝香宮邸に足をふみいれますと、大広間で、食堂で、階段で・・・聞こえてくる声。ささやきのわりにはっきりとしばしば聞こえるので、センサーはどこ?と無粋にもじろじろと見回してしまう。
おっと我に返ってはならぬと思いなおして、調度や庭をながめて集中す。

曖昧な意味合いのフレーズは
離脱する魂や弔いの花のように何かを訴えかけるのです
ひとつの劇場です
でも来場者自身が役者となり芝居の一部になります

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ボルタンスキーのインタビューを補助線に、お屋敷のなかを歩む。

あなたはとても重要な人物で 私もとても重要な人物で
私の祖母も 誰も彼もとても重要な人物です

誰もが唯一で 他の人とは異なっている
でも 三世代で忘却されるのです

後には何も残らない

忘却されるべき小さな魂たち。魂たちがこのお屋敷にふきだまっていて、ふっふっと声がもれてくる。

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2階へ

誰もいない(いるけど)屋敷に、低く重く響く鼓動。
お屋敷自体が実は生きていて、主人不在の間にこの屋敷の秘密を垣間見させてくれている・・・・・ようにも思える。

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↓ 影の劇場 / 心臓音 ↑
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ふふふ、これはおばけ屋敷だ。

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ここにいるのはどんなおばけだろう
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本館の古い空気をひきずりながら、新館へ。

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「まなざし」と・・・

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証明写真からとられたまなざしのカーテン、何重にも何重にも
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それにつつまれた「帰郷」。
衣服をつみあげた上に金色のエマージェンシーブランケットをかけた塊はふおん。まなざしと帰郷、帰郷とまなざし。

私の生命と芸術はホロコーストに結びついています
日本人が実体験していない過去なので
震災など他の体験を通して 私の芸術を読み取るのでしょう

ホロコースト・・・重要な補助線。

 

そして、「アニミタス」「ささやきの森」。
麦わらのしきつめられた部屋に入ると、風鈴の音色がひびく。

チリの砂漠に放置された風鈴。

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アニミタス

チリでは砂漠の真っ只中で誰もそれを見つけることはできないでしょう
もう一年以上経ちました
600個の風鈴のうち いくつ残っているのでしょう

風鈴の奏でる音楽 天空の音楽の一種の装置です

豊島の森に残された風鈴。

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ささやきの森

あれは巡礼地なのです
立ち寄った人は 風鈴を購入して 吊るしてある札に
愛する人の名前を書き込むことができます
あの森は祈りの場になるのです
人々はいつか消滅するけど 愛はそこに残る

場所とイメージやモチーフをコラージュすることで、物語ができる。
小さな魂アニミタスの小さな物語。

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2019年に日本でボルタンスキーの回顧展があるもよう。
インタビューでは、今後のプロジェクトの話も。

パタゴニアの南に 巨大なトランペットを設置して
風が吹くたびにクジラの歌を奏でるのです
誰も見に行くことはできないでしょう
でも 無人の極寒の地でトランペットが
クジラの歌を奏でていると考えることに興味があるのです
それは物語を作り出すことです

詩的で美しい。肺に呼び込む冷気も含めて、見てみたい。

 


<参考>